公開模試
そんなこんなで、気が付くと受験開始から1年が経とうとしていました。
当時はまだ択一試験がなかったので、毎年、5月の中ごろには論文試験の全国公開模試が
各専門学校で行われていたのです。
中には、複数の専門学校の模擬テストを受ける人もいましたが、
私は、自分の通っている専門学校のみにしました。1つ受ければ十分だと思ったからです。
この頃、個人的に一番学習が進んでいた、と思えたのが「経済学」でした。
でも、別に経済学部出身だったからではありません。なぜなら、私の属していた大学の先生は、
多くが「マル経」つまりマルクス経済学の専門家だったからです。
事実、私は、公認会計士試験の受験勉強をはじめてしばらくの間は、
マルクスの資本論も試験範囲に当然入っていて、バリバリ勉強するはずだ、
ととんでもない勘違いをしていました。
私が大学に入った頃は、はじめに学ぶ経済原論といえば、マルクス経済学だったのです。
教授の中には、ロシア人よろしくあご髭をぼうぼうにはやし、
旧ソビエト時代の社会主義的ジョークをよく飛ばしている人もいました。ただ、私たち学生には高度す
ぎて、なかなか笑えませんでしたが…
話が横にそれましたが、経済学については、受験経験者にも負けない自信が当時ありました。
その根拠は、やはり「人の3倍勉強した」という経験です。
前の年の秋には、東大君のやり方をある程度吸収していたので、それを経済学で実践してみようと思い立ちました。
経済学の基本書と問題集を計8冊ほど購入しました。
その中で、一番早く通読できそうな本を一冊に絞り、それを徹底的に繰り返すことにしました。
個々の論点で分かりづらいところのみ、比較のため参照する資料として、
他の基本書を横においておくことにしたのです。
本を買ってから、最初の2週間で、とにかく1回通読しました。もちろん練習問題を、
分かろうが分かるまいが全部解いた上でのことです。
ここでのコツは、「とにかく前進あるのみ」です。少々分からないところは、どんどん飛ばして、
はやく一通り読み終えるのがポイントです。
それが、1回目に分からなくても、2回目に最初に戻る頃には、ある程度の知識もついてきている
ことから、案外簡単に理解できたりするものです。
こうして、1ヶ月の間に、経済学の全範囲を3回繰り返しました。
この時の経験が最も大きかったと、今では確信を持って言えます。
そうやって、順調に(?)学習を重ねた結果、6月に発表された初めての公開模擬試験の結果は、
予想外に良いものでした。
約1,000人の受験者に対し、おおむね100番ちょっとのところに位置することができました。
当時、上位200番以内だと、大体60~70%程度の合格率だったと記憶しています。
私は、思った以上の効果に、正直調子に乗っていました。
愚かなことに、すっかり「合格はもらった!」という気になっていたのです。
「柴山君、あとは体調に気をつけて、ペースを落とさないように。大丈夫!合格ラインに乗っているよ!」
よく受験の相談に乗ってもらっていた講師の方から励まされ、お調子者の私は、
無意識のうちに気を緩めてしまっていました。
精神面のコントールって、本当に難しいですよ。
いったん緩んでしまった緊張の糸は、簡単にもとへは戻りません。
なお始末に終えないのは、本人は「自分はちゃんと努力している」と思い込んでいながら、
知らず知らず手を抜いていることです。
競争というのは、相手があることです。2ヶ月前に有利な位置にあっても、
残りの時間で競争相手が自分の2倍勉強していたら、最後には逆転されてしまうものなのです。
そのことを、当時の私はまだ知りませんでした。
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