柴山式受験ノウハウ
初めての講義が、期待と不安の中、終了しました。
1時間ほど昼休みを取った後、続けて2回目の講義が行われます。
私は、隣のパンチ君に声をかけました。
「君、簿記の勉強したことある?」
「いや、全然ないんだ。君は?」
「大学では経済学を専攻してたけど、全然勉強してなかったよ。」
「そう。俺は中央大学の法学部にいたから、はなっから簿記とか会計とかは縁がなかったな。」
「ふうん。でも、法学部なら司法試験を目指すのが普通じゃないの?」
そう問いかける私からふっと目をそらすと、パンチ君は決まり悪そうに答えました。
「いやあ、ほら、司法試験って合格率がすごく低いじゃない。
独立開業できる資格を取りたいと思ったんだけど、やっぱりもう少し合格率が高いほうがいいかな、
なんて思ったりして…」
なんか、どっかで聞いたような話です。案外同じようなことを考えている人が多いんだな、と思いました。
しかし、これはあとでつくづく実感したことなんですが、おそらく、2%だろうが6%だろうが、
10人に1人も受からない試験に変わりはないわけで、受かるタイプの人は受かる、
受からないタイプの人は受からない、という受験界の真理は確実に存在するんですね。
ちなみに、私は、受験勉強スタートにあたって、1つの戦略を立てました。
具体的には、東大・一橋、または早稲田・慶応あたりの人と友達になることです。
特に、東大生は意識しました。
「なんだ、これが戦略かいな!」
とがっかりしたあなた。まだ失望するのは早いですよ。
理由をお話します。
まず第1に、わたしはそれまで1日3時間以上の自宅学習をした経験がほとんどないこと、
第2に、大学受験の浪人時代にいたるまで、まともに塾へいった経験すらないこと、
さらには、浪人時代にも予備校の授業を半分も出ず、ゲームセンター浸りだった、
という厳然たる事実があります。
つまり、受験勉強のためのノウハウを全く持っていなかったのです。
そこで、私なりに悩んだ末、出した結論が、「東大生の勉強方法を真似しよう!」という戦略(?)でした。なにせ、彼らは小・中・高と、各世代で受験競争を勝ち抜いてきた、いわば「受験のプロ」です。
そのやり方を100%真似ることは無理かもしれませんが、8掛けぐらいは実行できるんではなかろうか、と考えたのです。
それでは、はたしてその成果は?
結論からいいましょう。そのやり方は大正解でした。
事実、私が目をつけた東大君は、大学1年生になったばかりで、
前年の駿台予備校の公開模擬試験で全国10位以内に入ったという天才児です。
ちなみに、彼は予想通り、翌年余裕で1発合格を果たしています。
おかげで、私も1年後には彼に及ばないものの、合格圏に入ることはできたのです。
あとは性格の問題だったのですが…
ともあれ、私はきらりと目を光らせながら、入門講座当初から彼の受験方法を逐一観察していました。
そして、あることに気付いたのです。
それは、「人の3倍勉強することを楽しんでいる。」ということでした。
この事実を目の当たりにしたとき、私は価値観を180度変えざるを得ませんでした。
たとえば、ある日こんなことがありました。
簿記の入門講義も第3クールにはいったころです。各クールごとに1冊ずつテキストが配本されます。
私たちは、第3クール第1回目の授業に望みました。
開始5分前のことです。ドラえもん先生が、私の隣にいた東大君の前に立ち、話しかけました。
「今回のテキスト、計算違いとか表記違いがあった?」
「いえ。大丈夫だったみたいですよ」
横で聞いていた私は、一瞬自分の耳を疑いました。
先生が1受講生に、テキストの内容に誤りがないかどうか尋ねているのです。
たしかに、その気になれば、テキストは2週間以上前に入手することは可能だったでしょう。
しかし、私などは、講義の当日にはじめて専門学校の受付で手にしたばかりです。
「ねえ。君はもう、このテキスト読んだの?」
おそるおそる聞いてみました。
「ええ。そうですけど」
別に入門なんだから、大したことないじゃん、といわんばかりの顔です。
「難しくなかった?」
「まあ、ときどき…でも、簿記って要するにパズルみたいなものだから、解説を読みながらやれば、
何とか独りでも勉強できますよ」
カルチャーショックでした。
私などは、簿記の勉強を苦痛と感じていました。
しかし、それが東大君にかかると「パズルの1つ」になってしまうのです。これでは勝負になりません。
それからもう1つ、印象的なことがありました。
その日は前回実施された実力テストの講評が行われました。
その時、珍しく、私が彼より少しだけ良い点数を取れたのです。
これは本当に嬉しかったですね。
その時、彼は私の答案を見て叫びました。
「ちっきしょー。やっぱり柴山さん、そこ、できてましたか。イージーミスしちゃいましたよ。
でも、次は絶対負けませんからね!」
人目もはばからず、悔しさを体いっぱいに表現していました。
しかし、それがまるで、サッカーの試合の後のようにさわやかな雰囲気なのです。
「負けたくない!」という気持ちが人一倍強いのでした。
彼の特徴を簡単にまとめます。
第1に、「人より3倍努力することを楽しんでいる」こと。
第2に、「強烈な競争心を持っている」こと。
第3に、「気持ちの切り替えが早い」こと。
これだけの資質を備えていれば、合格の栄冠は手中にしたも同然です。
ちなみに、はからずもこのことは、私が以前、池袋の営業で学んだことに通じるものがありました。
トップセールスマンの共通点です。
第1に、「人の遊んでいる時に努力を惜しまない」こと。
第2に、「ぜったい1番になってやる、という闘争心と、自信を持ち合
わせている」こと。
第3に、「お客さんから罵倒されても、すぐに立ち直れる」こと。
皆さん、どうですか?受験も仕事も、結局は自分自身との戦いである、と考えるならば、
高い目標を達成するための心がまえは、どんな場面であれ、本質的に同じなのではないでしょうか。
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