専門学校登校初日
その日は、朝から五月晴れで、とてもすがすがしく、受験勉強スタートにはもってこいでした。
私は、真新しい電卓とテキストを手に、商業簿記の入門講義に向かいました。
第1回の講義が始まる10分前に教室に着いたのですが、一歩そこに足を踏み入れ、
教室いっぱいの人にビックリしてしまいました。
そのクラスは、全部で50人以上いたでしょうか。すでに戦闘意欲むんむんの、むせ返るような熱気です。
とりあえず、後ろの方の座席は全てふさがっていたので、
しかたなく教卓に近い一番前の方まで歩いていきました。
入口から黒板の近くまでは、50メートルくらいあったでしょうか。
そこまでの道のりがとても長く感じられたのをよく覚えています。
黒板に向かって右側が窓のそばの席です。一番前の窓の近く、通路側の机が空いていました。
「ここ、いいですか?」
「どうぞどうぞ」
隣に座っていたのは、ややパンチパーマ気味のちょっとこわもての兄さんでした。
ほどなくして、簿記担当の先生がのっしのっしと壇上に上がって来ました。
体が(横も縦も)大きく、腕まくりしたYシャツの先から丸太のような腕がニョキッと生えています。
外見からは、とても知識産業の人には見えません。
その時は、公認会計士ってこのようにごつい人が多いんだろうか、と少し考えたりもしました。
「皆さんはじめまして。」
先生のあいさつが始まりました。話し口調がいかにもしゃきしゃきしていて、とても小気味よく、
私の波長に合う先生でホッとしました。
「ねえ君。」
となりのパンチ君が小声で私に話しかけます。
「なに?」
「あの先生、ドラえもんに似てない?」
なるほど、と思いました。
「でも、見ようによっては『巨人の星』の左門豊作っぽいよね」
「うまいこというね、くっくっく…」
私たちは、汗をかきかき熱っぽく公認会計士受験の心得を語る先生を尻目に、
ただただ笑いをかみ殺していました。
かくして、私の登校初日の授業は、なんとも緊張感に欠けたスタートとあいなったのです。
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