大手町の長い1日
3度目の合格発表の日がやってきました。
私は、この年、初めて合格発表の前日にぐっすり眠ることが出来ました。
特に感慨のようなものはありません。結果をみて、吉と出れば公認会計士への第1歩、凶と出れば、
同期の人間に3年ほど遅れて、勤め人になるだけのことです。
こういう心境を、「腹をくくった」と言うんでしょうね。
ともあれ、いつもより早い朝食をとり、通勤ラッシュにもまれながら、都営三田線の大手町駅を目指しました。
駅を降りると、やはり受験生らしき人の姿がちらほらと見えます。
彼らは、どんな思いで出口へと続く階段を上っているのでしょうか。
一歩一歩上っているうちに、ふと、それが合格へと続く道のように思えました。
「よく頑張ったね。そろそろ向こう側に行ってもいいよ」
神様からそう言われているような、不思議な心持でした。
合同庁舎の1階に着きました。まだ9時前です。発表までは少し間があります。
窓の所に寄りかかり、しばし外をボーっと眺めていました。
せわしげに人々が目の前を通り過ぎます。
彼らにとっては、今日という日は、昨日の続きであり、いつもと変わらない1日なのでしょう。
私や他の受験生にとっては…やはり特別な、人生の方向を決める1日になります。
ロビーにいる人の動きが慌しくなりました。どうやら、そろそろ合格者が発表されるようです。
エレベーターに乗り、発表場所へと近づいていきます。
目的地に到着し、皆が一斉にエレベーターを降りました。
掲示場所には、まだ合格者名簿は張られていません。
そこには、狭いスペースに何人もの受験生がひしめき合っています。
やがて、係の方が、合格者を掲示するべくやってきました。かたずを飲む瞬間です。
人だかりが静まり返ります。時が止まったようでした。
合格者が掲示されました。しかし、目の前は混雑していて、容易に近づけません。
仕方がないので、少し人が減るのを待つことにしました。
3~4分もすると、何とか割って入れそうな状況になりました。
掲示場所に歩み寄る途中、ガッツポーズをするもの、ハンカチで目を拭うもの、
明暗さまざまに私のそばを通り過ぎていきます。
「あった!」
自分の名前と受験番号を見つけました。
不思議と気持ちは穏やかです。
「とりあえず、もう2次試験の勉強をしなくて済むんだ」
それが最初の感想でした。
どこをどう通ったかは覚えていません。気が付いたら大手町の駅の改札前にいました。
公衆電話が目に入ったので、まずは入院中の親に連絡を入れました。
「おめでとう。これで病気も早く治るよ」
とにかくこれで、少しは親も安心してくれるでしょう。
やはり、肩の荷が下りた感じです。
私は、家に戻ると、また少し眠りました。
ずいぶん長く感じましたが、まだ1日の半分も終わっていないのでした。
■お勧めCD/DVDセミナー
Powered by
Movable Type 3.33-ja