ここでひとつ、私たち監査人がクライアントの会計帳簿をどのように監査するのか、
その手続を簡単な例でご紹介しましょう。
一般に、会社の通常の業務時間は朝9時から夕方6時くらいまでの間となります。
監査人は、そのあたりを考慮して、クライアントにお邪魔する時間をだいたい9時半から5時半までと
設定することが多いですね。
なぜなら、始業時間の9時ちょうどに行っても、会社の方で監査の受入れ体制がまだ整っていないですし、
また、終業時間ぎりぎりまでいると、その後、帳簿の片付けなど、会社の人の後始末が業務時間より
遅くなり、かえって迷惑をかけてしまうからです。
さて、それでは実際に、朝9時半にクライアントの会議室に到着したとしましょう。
だいたい、1チーム3人~5人くらいの人数です。
まずは、会社の担当のお姉さんが出してくれるお茶を飲んで、一息入れます。
そして、主査という、現場のまとめ役の公認会計士が、その日の各監査人の担当業務を割り振ります。
通常は、次のような分担表を作って担当業務を明らかにします。
業務分担表
会社名:〇×株式会社(3月決算)
往査日:11月21日~23日
関与社員 公認会計士 会計士補
項 目 A B C D E F 備 考
現金預金 〇
受取手形 〇
売 上 高 〇
仕 入 高 〇
このように、現金預金、受取手形、売上高や仕入高など、取引項目ごとに監査手続の担当者を決めます。
往査日とは、監査に伺う日のことです。
ここでは、1年の途中で、会社の会計業務が適正に行われていることのチェックをする目的で
監査に行く、という状況を想定しておきます。
なお、「関与社員」というのは、そのクライアントに関与し、その財務諸表が適正であるかどうかにつき
監査証明を行い、サインをする責任者のことをいいます。
社員とは、監査法人という会社における役員のことなんだ、と考えていただければよいでしょう。
さて、それでは次に、現金預金の項目を担当する、会計士補Eさんの監査手続を例にとって、
簡単に監査業務の内容を見ていきましょう。
現金預金のような財産項目については、監査を行う上で、次の3つが重要なポイントとなります。
1.会社の帳簿に書かれている現金の残高は、本当に「実在」するか?
2.会社の入金取引は、「正しく」帳簿に記録されているか?
3.会社の出勤取引は、「正しく」帳簿に記帳されているか?
1.のようなポイントを資産の「実在性」といいます。
2.や3.のようなポイントを記録の「正確性」といいます。
Eさんはまず、会社の経理担当者から、前月における1ヵ月の全ての取引を集計した「試算表」という表のコピーをもらいます。
試 算 表 No.10
〇×株式会社 作成日:11月8日
10月1日~31日
(単位:円)
項 目 前月残高 借 方 貸 方 当月残高
現 金 40
月における1ヶ月間の現金の動き>
月初40,000+入金合計300,000-出金合計250,000=月末90,000
⇒ 10月の末日現在で、金庫の中に現金が90,000円あった。
そこで、さっき挙げた監査の3つのポイントをもう一度思い出してみましょう。
1.10月31日現在の現金90,000円は、実在するか? (実在性)
2.入金額300,000円は、取引を正しく記録したものか? (正確性)
3.出金額250,000円は、取引を正しく記録したものか? (正確性)
実在性というのは、通常、決算日(1年の最後の日)現在における財産が実際にあるかという点が
重要になるので、これは3月31日などの決算日に確かめにくることが原則となります。
したがって、1年の途中で行う監査の時は、もっぱら2.と3.の「正確性」を重点的に検証します。
ここでは、さしあたり出金記録の正確性に関するチェックのやり方について、具体例をご紹介しましょう。
<出金記録の正確性のチェック例>
(1) 会社の人から現金の出納帳を借りて、10月出金記録の合計額が、
試算表の貸方250,000円と一致することを確認する。
(※帳簿記録の合計が、試算表に集計できていることを確かめる。)
(2) 現金の出納帳から、1件別に出金記録を「監査調書」という手続用の専用紙に書き出して、
領収書などの証拠資料と、金額や支出内容を付き合わせる。
(※帳簿記録が、証拠資料により裏付けられていることを確かめる。)
<監査調書の記載例(便宜上、一部の表記をわかりやすくしています)>
出金取引の検証 No.20
〇×株式会社 科目:現 金
11月21日 担当者: E
<資料:現金出納帳>
日 付 取引内容 金 額 照合
10月 2日 事務用品代 80,000 ν (ν…領収書と照合)
10日 交通費 20,000 ν
18日 光熱費 50,000 ν
25日 広告宣伝費 100,000 ν
合 計 250,000 ←(№10前ページ)と一致
結論:上記手続の結果、出金記録はすべて証拠資料と照合され、
合計額は正しく試算表に転記されていることが確認された。
上記のように、帳簿に記載されている取引の金額が、領収書などの証拠資料と
全て突き合わせることができればオーケーです。もしも、帳簿記載の金額と領収書の金額が
違っていたり、一部領収書が紛失されていたりしたら、それは会社の内部管理に問題ありとして、
監査調書に事実を詳しく書かなければなりません。
まあ、そういうことはめったにありませんが…
■無料メールセミナー一覧 すでに3000人以上が受講しています。
スポンサードリンク
« 2次試験の知識は役に立つか? | 公認会計士物語 | 実地調査 »