個人事務所の勤務時代
これは私の場合に限ったことかもしれませんが、やっぱり、税理士の先生の個人事務所に応募しても、
あまり良い結果には恵まれませんでした。
そこで、しかたなく、公認会計士の先生が所長さんの個人会計事務所の求人広告を探すことに
しました。ただ、公認会計士で独立している人の数は少ないことから、なかなか良い求人広告には
出会えませんでした。
7月も終わりに近づき、少しあせり始めた頃、ようやく就職雑誌で1つの公認会計士事務所の求人欄を
見つけ、喜びいさんで応募しました。
かくして、翌8月より、めでたく再就職とあいなったのです。
その事務所は赤坂の一等地にありました。
閑静な住宅街の一角で、すぐ近くには、大使館や赤坂御所が見えます。
私がお世話になった公認会計士事務所の所長先生は、女性の方でした。
その先生は、病院経営のコンサルティングや相続関係の仕事に強く、そのかたわらで、
株式会社や有限会社の経理業務を見たりしながら、さらにはプロスポーツ選手の所得税の申告など、
さまざまな業務を幅広くこなす、かなり精力的な方でした。
入所後、さっそく私は4~5社の会社の日常経理業務を担当し、さらに、地価税の申告や相続税の
申告業務も任されました。
その合間に、新規のお客様が株式会社を設立するというので、全ての段取りをつけ、
会社設立まで、お客様を完全サポートしました。
これらひとつひとつの仕事は、どれもこれも新鮮で面白かったです。
なにより、届出関係の業務に付随して、いろいろな官公庁や公共の施設に行けたのが、
はじめは凄く実務の勉強になりました。
区役所、税務署、都税事務所、法務局、公証人役場に国会図書館と、最初の3ヵ月に現場で
覚えた実務知識は、どれもこれも貴重な財産です。
時には弁護士先生の法律事務所に日参して、紛争事件になりそうな案件の打合せや、
遺産相続に係る遺族の方々の財産分与に関する調査など、本当に東奔西走の毎日を送っていました。
そういえば、ある相続税の申告に関する案件で、弁護士の人が、亡くなった資産家の方の、
出生から死亡時点までの全生涯の戸籍を取り、コピーを送ってきたことがありました。
弁護士資格を持っている方は、職業上、他人の戸籍を取得することができるんですね。
ただ、はじめは、あらためて死亡者の全生涯の戸籍をとる、その理由が全くわかりませんでした。
そこで、事務所の同僚に、なぜそんな事をするのか尋ねたのです。
「それはですね、今の奥さんとの間以外に、死んだ人の子供がいないことを確認するためですよ。
奥さんと知り合うずっと昔に子供を作っていたかもしれないし、または、変な話ですけど、
隠し子がいたりするかもしれないでしょう?」
なるほど、と思いました。
しかしまあ、なんとどろどろした話でしょう。「~サスペンス劇場」のドラマにでも出てきそうですね。
事実は小説よりも奇なり、です。
ともかく、監査法人にいたときとは違った意味で、たくさんのことを学ぶことができました。
現場の仕事というのは、本当に奥の深い、それでいて興味の尽きないものなのです。
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