公認会計士物語 > 第07章 教室の現場から> 知識と技術と哲学と…

効率的に簿記検定1級・2級・3級を学習する柴山式簿記講義

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知識と技術と哲学と…

専門学校の講師をしはじめた頃、
一番興味があったのは、「いかに短時間で合格レベルに受講生を引き上げるか」というった点でした。
つまり、 「究極の受験テクニック」です。

意識したのは、「この問題なら、こういう手順で解けばOK!」というような、機械的な解法パターンを作ることでした。
当時は、各回の講義の前には、最低でもその授業の時間数の3~5倍はかけて入念に準備し、
分刻みの講義スケジュールを作り、完璧なノートを用意していました。
あとは、事前に作ったノートに従って、オートマティックに講義を進行させるだけ、という状態にして…

しかし、何度かそれを試した結果、自分にとっての講義ノウハウを築く上では有効でしたが、
以外にも受講生に対してあまり受けが良くないことが分かりました。

その理由は簡単です。そもそも、「機械的に合格させるためのテクニック」という発想自体が
間違った方向性だったのです。つまり、「学習する」ということの人間的な側面を無視した結果だったのでした。
ある時、教室でこんなことがありました。テキストの問題を一緒に解いている時、
溜息交じりに、1人の受講生がふと漏らしたのです。

「なんか、勉強をしている、というより、決められたプログラムにしたがって無理にやらされているみたいで、すごく味気ないなあ…」

この言葉を聞いたとき、私はショックを受けました。
「効率的な学習」を意識しすぎたため、自分が受験生時代に体験して知っていたはずの、
「新しい知識を身に付ける喜び」や、「わかることの充実感」を、あまりにもなおざりにした講義をしていたんじゃないのか?
やっぱり、最後は「仕事は人間を相手にしているものなんだ」という基本的な問題をしっかりと
見つめることが一番大事だったのです。

それからは、教室で「知識」と「受験の技術」だけを教えるのではなく、
「自分の持っている、ビジネスや会計知識に対しての真剣な思い」、
つまり自分の哲学を伝えられたらどんなに素晴らしいだろう、と考えるようになりました。
そして、それを教室で実践するようになってから、受講生の反応が明らかに変わってきたのです。

授業の合間に、教育問題や戦後の日本における経済復興の意義、それに会計学という学問の歴史
や社会への役立ちなど、さまざまな事柄について自分なりの考え方を真剣に話したりすると、
みんなの目がぱっと明るくなり、教室はさながらゼミのような熱気を帯びてきます。

そんなとき、受験対策という枠を超え、学ぶことの楽しさを一緒に感じることができる。
これが、私にとって教室における最高の瞬間なのです。
どうやら、講師という仕事は私の性格にぴったりのようですね。


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